制度チャンネル〜ブログ版〜

制度チャンネル〜ブログ版〜

医療や介護の複雑な制度を解説します。

理学・作業療法士は名称独占?業務独占?どっちなの??


「名称独占」と「業務独占」のについてのお話をします。

この名称・業務独占について、理学療法士作業療法士であれば一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。この話題を肴に酒を酌み交わす方もいらっしゃるのでは?

 

国家資格とは?

名称独占や業務独占のお話をする前に、まずは国家資格とはどういったものなのかという説明をします。文部科学省のHPにわかりやすい説明がありました。

国家資格

国の法律に基づいて、各種分野における個人の能力、知識が判定され、特定の職業に従事すると証明される資格。法律によって一定の社会的地位が保証されるので、社会からの信頼性は高い。引用:文部科学省

 

 

国の法律に基づいた資格であることがわかります。社会からの信頼性が高いとのことです。そして、ここからが今日の本題です。 国家資格はいくつかに分類されます。

以上の4つです。

業務独占や名称独占という言葉はよく聞いたことがあると思いますが、国家資格の分類の一つなんですね。正確には業務独占資格名称独占資格というそうです。

名称独占資格とは?

名称独占資格資格がなくてもその業務に従事する事はできるが、資格取得者のみ特定の資格名称(肩書き)を名乗ることができ、資格を所有していない者が法律に定める特定の名称を名乗ることができない資格です。

また、名称独占の資格に類似したり、名称独占資格に関連している資格のように紛らわしくした名称を使用することが禁止されています。

引用:資格の王道

ざっくり言うと、資格をとればその資格の名称を名乗ることができますよ、ということです。 こういうことは箇条書きにするとスッキリします。

  • 資格がなくてもその業務に従事することはできる。
  • 資格取得者のみ特定の資格名称(肩書き)を名乗ることができる。
  • 資格を所有していない者が、法律に定める特定の名称を名乗ることはできない。

以上のようになります。

 

資格がなくてもその業務に従事することができる、というのは驚きですね。独占しているのは名称のみ、ということです。その業務を行うに当たって資格は必要ではない、とも言えます。

 

つまり、その業務を無資格者が行っても法律違反になりません。名称独占資格は特定の資格の名称を名乗ること「だけ」できます。 理学療法士作業療法士、そして栄養士や保育士などの資格がこれに当たります。

3  この法律で「理学療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、理学療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、理学療法を行なうことを業とする者をいう。 4  この法律で「作業療法士」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、作業療法士の名称を用いて、医師の指示の下に、作業療法を行なうことを業とする者をいう。

理学療法士及び作業療法士法 第一章 総則 第二条)

業務独占資格とは?

業務独占資格特定の業務に際して、特定の資格の免許、免状等を有する者だけが業務を行うことができ、資格がなければその業務を行うことが禁止されている資格のこと。

引用:資格の王道

業務独占資格を持っている者でないと、当該業務を行うことが出来ません。

医師は医療行為を行いますが、これは医師免許を持っているからですね。医師免許を持っていない者が医療行為を行えば当然罰則があります。

 

これも箇条書きでスッキリさせてみましょう。

  • 特定の資格の免許、免状等を有するものだけが業務を行うことができる。
  • 資格がなければその業務を行うことが禁止されている。

名称独占資格とは全く違います。医師、弁護士や公認会計士がこれに当たります。

第十七条  医師でなければ、医業をなしてはならない。 第十八条  医師でなければ、医師又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。

医師法 第四章 業務 第十七条、第十八条)

名称独占資格業務独占資格

名称独占資格業務独占資格の違いについてお話しました。名称のみを独占しているのか、業務を独占しているのか、ということが違います。

ここで一つ疑問があります。なぜ国家資格は名称独占と業務独占などに分類されるのでしょうか。

せっかく頑張って勉強して取った資格なのだから、業務を独占したい!!と思うのが自然なのではないでしょうか。

名称独占資格のように、名称のみを独占する、資格がなくても業務に従事できる、とかややこしいだけではないですか?

なぜ2つあるんだろう?考えてみました。

全ての資格が業務独占だときっと社会が混乱してしまうからだと思います。

例えば、調理師免許が業務独占資格だとしたら・・・、家で料理出来なくなってしまいますもんね。でも、ふぐ調理は業務独占資格でないと困ります。みんなふぐ中毒になってしまいます。

例えば、保育士が業務独占資格だとしたら・・・、子育て・保育が出来なくなってしまいますね。

例えば、理学療法士作業療法士業務独占資格になると・・・、たくさんの考え方があると思いますが、と前置きしておいて、在宅で対象者のご家族や多職種の方が対象者に理学療法作業療法を行うことが出来なくなってしまいますね。そうなると、地域包括ケアシステムがうまく稼働するかどうか・・・、んー微妙です。

 

しかしながら、前述した「資格がなくてもその業務に従事することができる」という点はどうでしょう。

 

我々は日々努力し技術を身につけています。実際には資格を持っていない方が有資格者と同様の技術を対象者に提供することは難しいことだと思いますが、法律的に資格を持っていない方も理学・作業療法を行うことが出来るということは腑に落ちませんね。

 

業務を独占するのか、名称を独占するのか資格によって分けているということは、我々の生活する社会に非常に重要な影響を及ぼすと考えていいと思います。何を独占するのか明確に分けておかないと、社会にとって不利益になってしまうこともあるのです。

最後に、、、

名称独占資格は取得するに値しない資格だ、社会的価値は弱い、と考える人がいるかもしれません。でも、その資格に与えられた意味と社会的な役割は、名称独占資格であるか業務独占資格であるかだけでは決められないことだと私は考えています。

 

社会的に考えれば、名称独占でないとダメな資格もあります。そのほうが社会的に利益につながることもあります。理学・作業療法士は大きな枠組みで考えたときに、名称独占資格として社会に利益を与えているのだと私は考えています。

 

技術職なのだから、とか、特殊な技術を持っているから業務独占資格に!!という考え方も理解が出来る部分もありますが、いささか乱暴な考え方のようにも思います。 大切なことはどのような資格であっても、その資格に与えられた使命を果たすことであり、社会に貢献することだと私は考えます。