制度チャンネル〜ブログ版〜

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医療や介護の複雑な制度を解説します。

理学療法士と作業療法士の違いって、なに??

質問:「理学療法士作業療法士って何が違うの?」

理学療法士として働いていると、こういった質問をされることが多いと思います。

特に多いのが担当患者さんや担当患者さんのご家族に質問されることです。さらには、自分の両親、家族、友人にされることもあります。さらにさらに、病棟看護師にされることもあるでしょう。私は、医師に質問されたこともあります。 私としてはこういった質問に慣れっこなので淡々と説明します。

では、どういった答え方をすれば相手は納得されるのでしょうか?

よくある返答で「手→作業療法士、足→理学療法士」と答える方、いらっしゃいます。この返答、大きく間違ってますよ!!とも言えるし、よくよく考えると、あながち間違ってもいないな、と思ったりもします。この返答で質問者が納得されるのであれば良いのかもしれません。

ただ、質問者が医療従事者の場合、この返答は「まずい」と私は思います。

それでは、このよくある質問を理学療法士及び作業療法士法を確認し原点に戻って考えてみましょう。

返答1:「理学療法士作業療法士って全く異なる職業なんですよ。」

私の返答はまず、冒頭でこのように説明します。

理学療法士作業療法士、全く別の仕事です。専門学校や大学等の養成校でのカリキュラムも全く違いますしね。

返答2:「対象者が違うんです。」

次に、このように答えます。

理学療法作業療法の対象者が違うんです。全て共通している訳ではないんです。理学療法士及び作業療法士法によれば、理学療法の対象者は「身体に障害のある者」です。

では、作業療法の対象者はというと、「身体又は精神に障害のある者」です。

違いますよね?

理学療法は「身体」に障害のある者で、作業療法は「身体」または「精神」に障害のある者なんです。「身体に」という部分は共通ですが、理学療法は「精神に障害のある者」を対象としていません。作業療法士の方が対象の幅が広いと言えます。

これは理学療法士作業療法士の成り立ちにおける歴史的な背景をみるとより明確になりますが、それはまた今度、別の機会に詳しく説明したいと思います。

返答3:「目的も違います。」

対象者の説明をしたら次に、目的の違いを説明します。

理学療法作業療法にも目的があるんです。

理学療法士及び作業療法士法によれば、理学療法の目的は「対象となる者の基本的動作能力の回復を図る」ことです。

では、作業療法の目的は「対象となる者の応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図る」ことです。

「基本的動作能力」と「応用的動作能力又は社会的適応能力」全く別ですよね。

ちなみに、おとなり韓国では業務領域の区別がかなりはっきりしているようです。 http://www.japanpt.or.jp/upload/japanpt/obj/files/activity/jpta_news281.pdf (JPTA NEWS,2013,P10-11参照)

返答4:「手段もまったく違いますよ!!」

最後に、目的を果たすための手段の違いを説明します。

コレすごく重要です。

理学療法士及び作業療法士法によれば理学療法の手段は「対象となる者に治療体操その他の運動を行わせること、および電気刺激・マッサージ・温熱・その他の物理的手段を加えること」です。

では、作業療法の手段は「対象となる者に手芸・工作・その他の作業を行わせること」です。

ここで言う「その他の作業」は、作業療法士協会のホームページなどで詳しく説明されているので、そちらをご参照ください。

http://www.jaot.or.jp/ot_job (作業療法士協会HP参照)

手段に関しても全く違いますね。

理学療法は「治療体操、その他の運動、物理的手段」です。

作業療法は「手芸・工作・その他の作業」です。

ここまでしっかり説明した上で、「手→作業療法士、足→理学療法士」という返答は、大きくハズレていないと思います。

そして、この理学療法を行うのが理学療法士作業療法を行うのが作業療法士というわけです。

最後に伝える大切なこと

理学療法士及び作業療法士法を改めて見ると、理学療法作業療法どちらの手段も「行わせる」なんです。

なので、主体性を持って「行う(実践する)」のは「対象者(患者さん)」で、「行わせる」のは「理学療法士作業療法士」となります。

ですから、対象者の方々に様々な内容を行ってもらうために、理学・作業療法士は試行錯誤しなくてはなりません。 療法士に対するよくある質問に対する返答を、理学療法士及び作業療法士法を再確認しながら考えてみました。

自らの職業に関連する法律を見ると新たな発見があります。 みなさまも忙しい臨床業務の合間に法律を確認してみてはいかがでしょうか?

対象:身体に障害のある者 目的:対象となる者の基本的動作能力の回復を図る 手段:対象となる者に治療体操その他の運動を行わせること。および電気刺激・マッサージ・温熱・その他の物理的手段を加えること

対象:身体又は精神に障害のある者 目的:対象となる者の応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図る 手段:対象となる者に手芸・工作・その他の作業を行わせること (以上参考・引用:理学療法士及び作業療法士法)